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月下独酌Ⅴ

前勝山市議会議員 松村治門のブログです。 ご意見は、harukado.0501@gmail.com まで。お待ちしております。

恐竜博物館がある長尾山総合公園をプロデュースしよう 《中編》

前回のおさらい

まずは、《前編》の内容をおさらいしておきましょう。

①県立恐竜博物館と連携しながらも、県立恐竜博物館に依存しない形で、長尾山総合公園をプロデュースする。

②県立恐竜博物館に訪れる来客数の73%は、ファミリー層である。したがって、長尾山総合公園もファミリー層をターゲットとする。

③加えて、リピート率を考えるならば、メインターゲットは福井県内のファミリー層である。拡大エリアは、金沢・富山までとする。

④ファミリー層のインサイトを探れば、「半日、腰を落ち着けて子供を楽しませる場所が欲しい」ことがわかる。県内の市場環境から見て、半日、腰を落ち着けてファミリー層が遊べる場所は少ない。したがって、長尾山総合公園はその方向性を採用する。



長尾山総合公園のポテンシャル


ー最初に聞いておきたいんだけど、長尾山総合公園のポテンシャル、つまり、潜在的な可能性をどういうふうに考えてる?-

これはですね……抜群です。もう、金の卵を産むニワトリと言ってもいいくらい。


福井県が発表した平成27年度福井県観光客入込数(推計)を見てみましょう。
福井県内の有名観光地の入込客数が出ています。

東尋坊…………………147万9千人
芝政ワールド……………44万1千人
大本山永平寺……………58万1千人
一乗谷朝倉氏遺跡……108万人
あわら温泉……………101万8千人

さて、ここに面白いものが出てきます。
西山公園…………………99万人


ー西山公園って、あの鯖江市にある西山公園?-

そう、あの西山公園です。
見事なツツジや、レッサーパンダでも有名ですね。

この西山公園は、行った方はご存知でしょうが、公園です。アミューズメントパークでも何でもない。でも、あそこでは「焼き鳥合衆国」はじめ様々なイベントも開かれています。

そして、興味深いのは県内客の比率です。

東尋坊…………………147万9千人(内、県内客20万7千人)
芝政ワールド……………44万1千人(内、県内客 7万9千人)
大本山永平寺……………58万1千人(内、県内客 9万9千人)
一乗谷朝倉氏遺跡…………108万人(内、県内客20万5千人)
あわら温泉……………101万8千人(内、県内客32万人)

つまり、入込客数に対する県内客の割合は、

東尋坊…………………14%
芝政ワールド…………18%
大本山永平寺…………17%
一乗谷朝倉氏遺跡……19%
あわら温泉……………31%

となります。これに対して、西山公園は

西山公園……………99万人(内、県内客71万3千人)

入込客数に対する県内客の割合は、実に72%に及びます。

公園の特徴が如実に出ている数字です。公園は市民や県民が使うもの。「ちょっと出かけてみようか」と遊びに行く場所。気安さが観光地とは違います。

《前編》で、私は「長尾山総合公園は、福井県民をターゲットとする」と述べました。その理由の一端は、長尾山総合公園が公園だからです。観光地へファミリーで行くというのは、なかなかありません。目的が違うからです。子供を遊ばせるために永平寺に行く、一乗谷朝倉氏遺跡へ行く。これはちょっと違う。
気軽に子供を遊ばせに行くのであれば、真っ先に出かけるのは公園です。ここで、公園と観光地との差異化が図れる。

ただ、公園で半日遊ばせるのも難しい。そこが他の公園と長尾山総合公園との差異化です。


西山公園と異なり、長尾山総合公園には、何といっても県立恐竜博物館がある。
しかも、恐竜博物館の客層はファミリー層が4分の3を占めている。

これはもの凄く重要なことです。
顧客ターゲットが最初から絞られているのですから。



ーそれは、そんなに大切なことなの?-


そりゃそうでしょう。顧客の層をどうやって絞り込むのか。それで皆が頭を悩ますのですから。通常は、顧客をいくつかの層にわけます。セグメント化と呼ばれる行為です。そして、その中の特定のセグメントに手持ちの資本を集中させる。これがターゲティングです。ここを見誤ると、すべてが狂ってしまう。


東尋坊を考えてください。東尋坊を訪れる人たちの年代、性別、団体の様相などは確定できます?
子供が多いのですか?ファミリーですか?カップルですか?それとも高齢者ですか?
私も何度も東尋坊に足を運びましたが、よくわからない。表現するなら「多種多様」としか言いようがありません。こういうときが一番困るのです。

そこを考えなくてよい。これだけでも、長尾山総合公園はアドバンテージを持っているのです。手持ちの資源をどこへ集中させるかが明白ですから。



もう一度申しますが、方向性さえ間違わなければ、長尾山総合公園は金の卵を産むニワトリです。

ただ、現状では、その金の卵を産むニワトリに、金の卵を産ませないようにしている。
その最たるものが、ゴールデンウィークと夏休みの期間に、長尾山総合公園に車の乗り入れをさせていることです。


ファミリーを楽しませるのか苦しませるのか


ゴールデンウィークと夏休みの間は、長尾山総合公園への車の乗り入れを禁止する。これは、どういうこと?-

《前編》の最後は、そこで終わりましたね。
それでは、そこから話を続けましょう。

「県内のファミリー層に半日滞在してもらう」という方針を立てたのであれば、ゴールデンウィークと夏休みの間は、長尾山総合公園の車の乗り入れを禁止します。

具体的には、長尾山総合公園の外部の駐車場に車をとめて、そこからパークアンドライド方式で、バスでのピストン輸送で長尾山総合公園まで来客者を運ぶことになるでしょう。



ーなぜ、そんな手間のかかることをするの?-

簡単な話です。現在の方式では、単に苦痛を与えているだけだから。

ゴールデンウィークや夏休みともなれば、多くの人々が県立恐竜博物館へ訪れます。そして、名物の渋滞が始まる。1キロ2キロの渋滞なんて珍しくもありません。

しかも渋滞中は、トイレにも行けない。物売りが来るわけでもない。車に缶詰のままです。そんな思いをして、県立恐竜博物館へ辿り着く。ようやく、入れると思うと、県立恐竜博物館の入り口で長蛇の列ができている。


ーあれはひどいよ。なんで?-

元々、県立恐竜博物館を建設したときに、入館者のMaxを40万人程度で設定しました。100万人の来客数に対応できるはずがない。キャパシティーを超えているのです。

福井県が第二恐竜博物館の建設に踏み切った理由は、もちろん県の観光戦略として恐竜ブランドを更に伸ばそうという意図もあったのですが、現在の恐竜博物館の受け入れキャパを超えているという事態も無視できなくなったからでしょう。


ーなるほどねー


想像してください。

あなたが子供を楽しませるために県立恐竜博物館へ行こうとする。
車に乗って勝山へ向かいます。

ところがそこへ待っているのは車の渋滞です。
子供はトイレに行きたいと言い始める。「なんで、あのときトイレに行っておかなったんだ」と怒りたい気持ちをあなたはこらえる。コンビニは遠くに見えたので、奥様が子供を連れてコンビニまで歩いていく。大変です。そんな思いをして長尾山総合公園へ辿り着いた。「駐車場の空きはないのか?」と駐車スペースを探して、ようやくあなたは駐車することができた。

車を止めて、恐竜博物館まで歩いていくと、入館者が入り口で長蛇の列をなしている。どうやら券を購入する人たちが列を作っているようだ。「さっき寄ったコンビニで入場券を売っていたのは、こういう理由だったのか。しまった。あのとき買っておくべきだった」と、あなたはほぞを噛む。しかし、ここまで来て帰るわけにもいかない。「ねえ、まだなの?まだ入れないの?」と我慢の限界まで来ている子供たちをなだめながら、諦めて列に並ぶ。

ようやく恐竜博物館の建物内に入ることができた。

建物内も溢れんばかりの人だ。でも、せっかく来たのだからと歩いて見て回る。
子供たちは喜んでくれたようだが、2時間近く歩き回ったあなたはヘトヘトに疲れている。

平成24年度 恐竜博物館の滞在時間】
30分未満………………………0.63%
30分以上1時間未満……………3.16%
1時間以上1時間30分未満……19.56%
1時間30分以上2時間未満……13.15%
2時間以上2時間30分未満……23.79%
2時間30分以上3時間未満………6.26%

子供たちも飽いてきたようなので、あなたはそろそろ恐竜博物館から出ようと提案し、家族は博物館を出る。あなたの目に飛び込んできたのは、目の前の駐車場を埋め尽くす車の姿と人の多さ。
「特に、ここでやることは他になさそうだ」
とあなたは思う。

さて、次にあなたが考えることは?


ーそうだな……「一刻も早く、ここを脱出したい!」という感じかなー

そうでしょうね。私でもそう考えます。とにかく、この場所から離れたい。
これではファミリーに楽しみを与えているのか、苦痛を与えているのかわからない。


「長尾山総合公園で、ファミリーが、半日、腰を落ち着けてゆったりと楽しむ」との方向性を打ち出しました。「一刻も早く、この場から立ち去りたい」と思わせるようでは、まったくの逆方向のことをしているのです。


また、従来のやり方。つまり、ゴールデンウィークや夏休み期間に長尾山総合公園の駐車場に車で乗り入れするやり方は、商売のやり方としても間違っています。



ーどういうこと?-

渋滞を起こさないで、駐車場の回転率を上げようと思えば、お客様には早く退場してもらうより他にありません。長尾山総合公園の滞在時間が短ければ短いほど駐車場の回転率はあがります。

ラーメン屋ならば回転率を上げれば上げるほど、利益が発生します。ですがわれわれは、ラーメン屋ではない。駐車場の回転率をあげることは、県立恐竜博物館の来館者をさばくことを意味し、長尾山総合公園には何の益もないことです。要するに、「長尾山総合公園から早く出て行ってください」と言うわけですから。

われわれが駐車場を経営しているのであれば、回転率を上げることは利益を上げることを意味します。しかし、長尾山で時間をすごしてもらおうという趣旨からすれば、駐車場の回転率を上げることに何のメリットもありません。

よく言われることですが、「恐竜博物館へ行っても、食事をする場所がない」
それでは、食事をする場所を作りましょう……と考えて、更に滞在時間を延ばせば、駐車場の回転率を下げて混雑を大きくするばかりです。


ーだったら、長尾山総合公園から退出いただいて、別な場所に集まってもらえばいいんじゃないの?-

そう考えているが現在の勝山市の方向性です。道の駅を作る、まちなかへ誘客するなどの手法を模索していますが、《前編》で述べた商売の常道から外れています。お客様は動かしてはいけません。

なぜ駅前に商店街があるのですか?それは駅に人が集まるからです。人が集まるからビジネスが成り立つ。駅に人が集まるのに、わざわざ駅から5キロも離れたところに店舗を構えさせ、客様を分散させてビジネスしようなどと考える人はいません。効率が悪いからです。

長尾山総合公園での滞在時間を延ばすからこそ、その時間を活用して様々なサービスを顧客に提供することができます。飲食もしていただく。施設を使ってもらって利用料を支払いいただく。そういったビジネスが発生するのです。
《前編》で述べたように、永平寺の顧客囲い込みモデルは、ビジネスモデルとして依然有効なものです。




また、ゴールデンウィークや夏休みに長尾山総合公園に車で乗り入れて、かつ、渋滞を緩和させようという試みは、政策論としても間違っています。


ーそれは、どういう意味で?-

長尾山総合公園は勝山市の所有物です。したがって、県立恐竜博物館の来館者のために、勝山市は駐車場を整備しました。ところが、その駐車場のキャパすら超えて来館者が訪れるため、渋滞が発生しています。

この渋滞に対しては、5つの方法しかありえません。

 ①渋滞を解消することをあきらめる。
 ②パーク&ライドを更に充実させる。
 ③長尾山総合公園に駐車場を更に増設する。
 ④駐車場の回転率を上げる工夫をする。
 ⑤全面乗り入れ禁止にする。

①「渋滞解消をあきらめる」というのも、ひとつの選択肢です。ただし、これは顧客満足をはなから無視した方法です。

④は先ほど申し上げたように、長尾山総合公園に何らの益ももたらしません。

ならば、②「パーク&ライドを更に充実させる」、③「長尾山総合公園の駐車場を更に増設する」というプランはどうでしょう。

この方法を採用するならば、「なぜわれわれは市税を投入しなければならないのか」との問いに答える必要があります。歯に衣着せぬ言い方をするならば、「なぜ、われわれは税金を使って観光客を喜ばせる必要があるのか」という問いです。

「それがおもてなしの精神です」という、おためごかしは無視しましょう。確かに、おもてなしの精神は必要です。しかし、それとて限度というものがある。

長尾山総合公園は、勝山市民のための公園です。勝山市民が楽しむことのできる場でなければならない。したがって、《前編》で申し上げた「ファミリー層が、半日、腰を落ち着けてゆっくりと楽しむ場」のファミリー層とは、原則、勝山市民を含むのです。

福井県内のファミリー層」まで拡張したのは、ビジネスモデルとして成立させるためです。ビジネスモデルとして成立させるためには、顧客の数、すなわち市場の規模(スケール)を確保しなければならない。それならば、福井県内のファミリー層を対象としよう!というだけの話。

原則は、勝山市民のファミリー層が楽しむものでなければなりません。

市税を投入するとはそういうことです。
ゴールデンウィークや夏休みの混雑期に、勝山市民が長尾山総合公園へ行きたいと思いますか?
「今の時期はどうせ込み合ってるから行ったところで……」
と尻込みするのでは、市税を投入した価値はありません。

混雑期でも、勝山市民が「それじゃ、子供を連れて半日過ごそうか」と思えるような条件整備を整えて初めて市税投入した意味があるのです。



ー市税を投入する意味は、観光産業の活性化という形でリターンするのでは?-

う~ん……一体、いつになったらリターンするのでしょうね。

リターンという概念は、
 ①市税を投入する。
 ②経済波及効果を産む。
 ③市民の収入アップにつながる。
 ④税収増加を産む。
このサイクルを指すものです。

現在の長尾山総合公園内に市税を投入して、パーク&ライドを増強したり、駐車場を増設することが、どのような経済波及効果を産むのでしょうか。建設費用が特定業者に対して影響を及ぼす程度で、その効果は限定的です。




乗り入れ禁止の効果


ー乗り入れ禁止の効果は?-


乗り入れを禁止することにより、初めて、「ファミリー層が、半日、腰を落ち着けてゆったりと子供を遊ばせることができる」との方針を実現することができます。

この段階で、ようやくわれわれは「それならば、どのような手法で、ファミリー層に半日楽しんでもらおうか」という議論をすることができる。



ーでも、わからないことがあるー

なんでしょうか。



ーなぜ、これまで乗り入れ禁止をすることができなかったの?-

理由は3つでしょうね。

ひとつは、予算の問題です。

ゴールデンウィークや夏休み期間に駐車場への乗り入れを禁止する。これを実現するためには、2つのものが欠かせません。ひとつは長尾山総合後編から離れた場所で駐車場
を確保すること。そして、そこから長尾山総合公園まで運ぶ手段を確保するための予算です。

予算の問題については、これはビジネスモデルそのもののに関わってきます。

これは、「どこで収益を上げるのか」、「その収益でビジネスモデルを維持できるのか」という話でして、乗り入れ禁止による顧客の移動に関するコスト。バスの借り上げ料などは、ビジネスモデルの中で考えなければなりません。

ビジネスモデルをどのように構築するのか。それは《後編》で説明します。




ーそれじゃ、乗り入れ禁止をしなかった二つ目の理由は?-


二つ目の理由は、福井県との関係性です。

思うに、乗り入れ禁止に真っ先に反対するのは福井県でしょう。県立恐竜博物館への来館者に悪影響を及ぼすとの理由で。

これは、現行の方式よりも顧客メリットが高まることを前提に、福井県を説得するより他に方法はありません。




ー長尾山総合公園は勝山市のもの。福井県の説得が必要なの?ー



行政というのはそういうものなのです(苦笑)。




ーでも、どうやって説得するの?-



現行方式では、長尾山総合公園に車で乗り付ける目的はひとつしかありません。県立恐竜博物館へ行くためです。目的がひとつしかないから、前述したように、県立恐竜博物館の入り口で券売の長蛇の列ができる。

しかし、長尾山総合公園への車の乗り入れを禁止する。バス等の手段を確保する。そして、長尾山総合公園で半日過ごせるだけのアミューズメント性を高める。すると、長尾山総合公園に来た人々は、県立恐竜博物館の入り口の長蛇の列を見てどう思います?

「あれだけ並んでるのなら、子供を遊ばせながら時間を見て、混雑が解消されてから恐竜博物館に入ろうか」

つまり、県立恐竜博物館への入館混雑を緩和する効果があります。

それに、われわれは「福井県民のファミリー層」をターゲットにしています。県立恐竜博物館と勝山市がタイアップして、福井県民のファミリー層を楽しませよう。県にとっても悪い話ではありません。

いずれにせよ、これは説得しなくてはいけない。




ーそれじゃ、乗り入れ禁止をしなかった三つ目の理由は?-


行政は新しいことをやりたがらない。
それだけです。



ー3つの理由は理解したけど、乗り入れを禁止したら、何ができるの?-

乗り入れを禁止することにより、顧客が長尾山総合公園で過ごす時間を確保することができます。

ようやく、ここでわれわれは次の議論をすることができます。
「われわれは、長尾山総合公園内で顧客にどのような価値を提案するのか」

その価値については、《後編》で詳しく述べましょう。



   -《後編》へ続くー