月下独酌Ⅴ

前勝山市議会議員 松村治門のブログです。 ご意見は、harukado.0501@gmail.com まで。お待ちしております。

【勉強・受験】  基礎力・応用力のお話  ①応用力とは何か

はじめに

昨年末のこと。コンビニのレジで、カウンターの向かい側の店員さんから声を掛けられました。
「つかぬことを伺うのですけど……子供の成績をどうやって伸ばせばいいんでしょう」
「うちの子、今年卒業して上の学校へ行くんですけど、心配で心配で」


高校受験生や大学受験生を教え始めて、はや25年が経とうとしています。さすがに市議会議員時代は、よほどの理由がない限りはお断りしてきましたが、それでも多くの受験生に接する機会を得ました。
当たり前のように東大に行ってしまう子もいました。中学・高校と6年にわたり不登校だった子が「僕は、人生をリセットしたい」と一念発起し、東京六大学へ行ったケースもありました。こちらが泣きたくなるくらい定着度の低い子もいれば、一を聞いて十を知る子もいました。本当に子供は様々です。

それでも、子供たちは、それぞれに夢に向かって努力していました。その努力を支えてあげたいと私も25年近くにわたり子供たちに接してきました。

レジで私に問いかけたお母さんの他にも、最近、保護者からの問い合わせが増えてきました。多くの保護者が同様の悩みを抱え、我が子のために何かをしたいと考えていらっしゃいます。

経験の中で、少しだけわかったことをお伝えできれば……それが本稿の目的です。


本稿の対象

本稿は次のような方を対象としています。

①教科書の例題は解けるのに、テストの点が伸びない。
②基礎力とはどこまでやれば良いのか、わからない。
③「できる子」は、なぜできるの?
④塾や家庭教師をつけるタイミングがわからない。


本稿の内容

まずは、多くの方々が抱いている誤解を解くことから始めます。
それは、「応用力は基本的な問題を数多く解けば得られる」というもの。
この誤解は、「応用力とはそもそも何か?」との問題と密接に関係します。

もうひとつの誤解は、「頭の良い子は知識の量が違う」というもの。私の経験上、学年トップの子と学年30番の子の知識量にさほどの違いはありません(定着率の差はありますが)。

その誤解を解く過程で、「応用力とはなにか」を説明します。
子供の頃、足の速い子がクラスに数人います。誰にならったわけでもないのに、足が速い。そういった子は「体の使い方が上手い」のです。同様に、誰に教わったわけでもないのに成績の良い子もいます。そういった子は「頭の使い方が上手い」と言えるでしょう。頭の使い方が上手いとは、詰まるところ、応用力を自然と掴んでいるのです。

そして、最後に、私見としての「応用力の掴み方」。その方法について説明いたします。




応用力とは「知識をネットワーク化すること」である

「教科書の例題は解けるのに、応用問題が解けない」
「基本的な知識はあるはずなのに、模試を受けると点につながらない」
少なからずの子供・保護者の方々が抱く悩みです。

なぜ、得点に結びつかないのでしょう。

保護者の方々は言います。「うちの子は応用力がないから」と。
そのとおりです。
ですが、「応用力とは何か?」を正確に把握していないと、
「簡単な問題をたくさん解けば基礎力がつく」
「基礎的な問題の次に、難しい問題を解いて応用力をつけよう」
「でも、難しい問題が解けない」
「もう一度、簡単な問題に戻って基礎力をつけよう」
といった、間違った無限ループを繰り返すことになります。


では、応用力とは何でしょうか。




【応用力とは知識のネットワーク化である】

結論から申し上げると、「応用力とは、知識をネットワーク化し、それを現実に反映させる力」だと私は考えています。


数学を例えにとり、具体的に見ていきましょう。

中学1年生は2学期に「比例・反比例」を学びます。

ここから、中高6年間にわたる「関数の旅」が始まります。
 ・中学1年生ー比例・反比例
 ・中学2年生ー1次関数
 ・中学3年生ー2次関数
 ・高校数Ⅰ-2次関数
 ・高校数Ⅱ-三角関数、指数・対数関数、微分積分
 ・高校数Ⅲ-平面上の曲線、複素数平面、微分積分


関数問題の苦手な高校受験生は多いのですが、彼らの内部で蓄積された「関数の知識」は次のようなイメージです。

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まさに、知識が知識のまま蓄えられてしまった。そんな状態です。
「教科書の例題はすらすら解けるようになったけれど、模試の問題などは、さっぱり解けない」という子供は、まさにこの状態に陥っているのです。



この状態を抜け出るためにネットワーク化が求められるのですが、次は、そのネットワーク化について説明しましょう。




【ネットワーク化とはどのような状態なのか】

一般的に、知識は単体として独立して存在します。

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この単独で存在している知識をネットワーク化して応用力をつけます。
ネットワーク化された知識とは次のようなイメージになります。

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ネットワーク化とは何か、また、なぜ必要なのか。それは知識同士がどのようにつながっているのかを見てみればお判りになります。

本来、異なる知識をつなげるためには、互いの知識の中に「共通する何か」を見つけなければなりません。

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異なる知識を結びつける共通項を発見することは、全く異なる次元の知識を手に入れたことを意味します。一般に、この共通項は「道理」とか「物事の根っこ」と呼ばれるものです。

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「道理のレベル」というと難しくなりますが、日常生活でこのレベルの知識は様々な場面で顔を出します。

例えば、主婦が料理を作る様を見ていると、「なるほど、道理だ」と感じる場面があります。
「小麦粉は?……あら、小麦粉がないわ。それなら〇〇を使えばいいか。どうせ効果は同じだから」
これが道理のレベルの発想です。食材Aも食材Bも効果としては同じなのだから使えばいいでしょ?との発想は、共通項を弁えないと出てこないものです。

何十年もの間、日々食事を作られた主婦は、誰に言うともなく道理を掴んでいます。逆に、私などは「知識のレベル」の経験しかありません。「カレーは作れる」「チャーハンは作れる」という知識はあっても、それらを横断するネットワーク化ができていないために、共通項、すなわち道理のレベルにまで達していないのです。

そして、重要なことは、受験なり模試なりは道理のレベルでの争いだという点です。

受験問題に「見たこともない知識」は出てきません。
中学生の教科書に出てくることが高校受験では問われ、高校生の教科書に出てくる内容が大学受験で出題されます。

それは、例えるならば、目の前に見たことのある食材を出されて「さあ、これで料理を作ってください」と言われるようなものです。

おそらく、道理を掴んでいる主婦ならば易々と3品を作るでしょう。しかし、知識レベルでの料理しか知らない私ならば、包丁を持ったまま立ちすくみます。食材は見たことがある、包丁の使い方も知っている、しかしどこから手をつけてよいのかわからない。まさに、鉛筆を持ったまま解答用紙をにらむ受験生と同じです。