月下独酌Ⅴ

前勝山市議会議員 松村治門のブログです。 ご意見は、harukado.0501@gmail.com まで。お待ちしております。

私にかけられた不当な嫌疑と、勝山市議会における異常事態について -その2-

私が関わった事業の概略は、前回説明したとおりです。

事業の何が問題視されているのか」について説明する前に、勝山市議会において行われた議論(とも呼べない代物ですが)の異常さについて説明いたしましょう。

ここを理解していただかないと、「事業の何が問題視されているのか」を理解されることが困難になるからです。


禁断の論法を用いた勝山市議会議員たち

おおよそ、民主主義国家において「許すべからざる議論の方法」とされる論法が存在します。使ってはならないとされる禁断の論法です。

そのひとつに「悪魔の証明」があります。今回の騒動の中で、一部の勝山市議会議員が使った論法がこれでした。


通常、警察が被疑者を逮捕する場合には、次のような論法を用います。

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警察は証拠を集めます。集めた証拠に基づいて、被疑者を逮捕します。

そこで、警察がこんなことを言い始めたらどうなるでしょう?

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確たる証拠も揃えず、疑いだけで逮捕してしまう。そして、「お前が無実を主張するのならば、自分の無実は自分で証明せよ」と言う。立証責任を相手に負わせてしまう論法です。

これを「悪魔の証明」と言います。


中世において、魔女狩りでこの論法は使われました。

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「お前は魔女だろう」
「ちがいます」
「いいや、魔女に違いない」
「魔女ではありません」
「いや、魔女のはずだ。お前が魔女ではないと言うのならば、お前自身で魔女ではないことを証明せよ」

 

自分が魔女ではないことを証明できる人間などいません。そして「証明できないのならば、お前は魔女だ」と多くの人々が火あぶりにされました。この苦い経験を基にして、悪魔の証明はタブーとされたのです。


今回の一連の騒動の中で、勝山市議会議員の一部議員たちはこの論法を用いました。

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実際に、市議会調査委員会は4月17日に立ち上がりました。
この委員会を起ち上げるためには、2つ以上の確たる証拠が必要なはずです。それはそうでしょう。議員を糾弾し、調査委員会まで起ち上げるのですから。


しかし、確たる証拠はひとつもありません。証拠もなしで委員会は起ち上げられました。笑止なことに、証拠はこれから探すそうです。本会議を傍聴に来られた、とある区長さんは
「馬鹿じゃないのか?今から証拠を探すってか?」
「証拠が出てこなかったら、どうするんだ?」
「市民の血税使って、何やってるんだ?」

とボヤいておられたそうです。


翌日の新聞報道で、私のコメントが掲載されていました。
「確たる証拠を提示してほしい」
このコメントはそういった意味なのです。


恐怖の合わせ技

悪魔の証明」は立証責任を相手側に追いやるものでした。

そして一部の市議会議員たちは声高に主張しました。
「議員たるもの、疑惑をかけられるだけで失格だ」


確かに、おっしゃる通り。
そこで私が説明しようとします。
すると、恐怖の合わせ技がやってきました。
その名も「全く聞く気がない」



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「自分の無実は自分で証明しろ」と立証責任を相手方に渡した後に、私が何を説明しても
「納得いかない」
「理解できない」
これを続けていけば、私は悪者にされてしまいます。なぜなら、彼らが納得しない限り、私は説明責任を果たしたことにならないからです。

悪魔の証明で、説明責任を私に転嫁する。
②私の説明には、「納得できない」と言い続ける。
③私は説明責任を果たしていないことになる。
④ゆえに、私は断罪される。 

こういうロジックです。



3月30日に、私は市議会議員各位をお呼びして説明会を行いました。詳細な説明をするために、事業に携わった民間人2名にも説明補助員としてご参加をお願いいたしました。ひとりは金沢で一緒に事業に携わった会社の社長。もうひとりは、事業立ち上げから深く企画に携わった勝山の人です。

2時間にわたって罵声と怒号が飛び交う密室での会議に参加した彼らは、会議終了後に私に言いました。
「だめだよ、松村さん。説明するだけムダだ。あいつらは、そもそも聞く気がない。何を言っても『納得できない』って言うだけだ」

そして、
「くやしいなあ。なんで、汗かいて一生懸命に観光事業やった議員さんが、汗もかいてない議員どもに、こんなに罵声浴びせられなきゃいけないんだろう」

何も難しい話ではありません。
彼らが黙って私の話を30分聞いてくれれば、それで良かったのです。
実際に、私が行った市政報告会での説明を聞いていただいた市民の皆さんは、
「これのどこに不正があるの?」
と納得していただいています。

話をし始めると声高に話の腰を折る。
「そんなこと聞いてるんじゃねえ!」
「金もらったんやろ?」

との罵声が飛ぶ。これでは議論をするどころか、説明をする機会すら与えてもらえないことと同じです。


ちなみに、お知り合いの議員さんに尋ねてみてください。
「松村のやった事業の内容や効果をご存知ですか?」

「知らない」と答えるでしょう。なぜなら、そのような質問は一度もされたことがないからです。通常ならば、私に事業の全体像の説明をさせるでしょう。事業の目的や趣旨、どのように行われたのか。金の流れはどうだったのか。そして、最も重要な、事業の成果はどこに表れているか。それを聞いたのちに「質問を受けます」と私は質問を受けたことでしょう。

30分で良いから、私に自由に説明できる時間を与えてくれればそれで良かったのです。

そして、その説明をする時間さえ与えてくれたならば、勝山市に実損が出る現在の状態は招かなかったことでしょう。



初めてこの問題が予算委員会で取り上げられたとき、私は一抹のきな臭さを感じました。そこで帰宅した後、すぐに顧問弁護士に相談をしました。

彼は私にこんなアドバイスをくれました。
「とりあえず、これからの全ての議事と休憩中の会話、何でもよいから録音しておけ。法廷での証拠能力云々は問題ではない。お前は政治家だ。録音したデータを市民に公開するなり、マスコミに渡すなり、使い道はあるはずだ。きな臭いと思うのなら、すべての会話を録音しておけ」

そのアドバイスにしたがい、私はすべてのことを録音してあります。
もちろん、3月30日の会議も。
飛び交う怒号と罵声も。
いつか皆様に聞いていただくときが来るかもしれません。



市議会の名誉のために申し上げておきますが、すべての議員がそうであったわけではありません。
一部の議員……5名程度の議員が声高に罵声を浴びせるのであって、その他の議員はダンマリを決め込む状態でした。
もちろん、何とか調整を図ろうとした議員もいました。私を守ろうと必死で頑張ってくれた議員もいました。夜中にこっそり電話をかけてきて、私を激励してくれた議員もいました。

ただ、最後は声の大きな一部の議員にひきずられるようにして、調査委員会は設置されたのです。





私は正直、恐怖を感じています。

疑いだけで議員を縛り首にできる。そんな先例を彼らは作ってしまった。

議員を縛り首にするなどは簡単にできるではありませんか。
「不正の疑いあり」と新聞に書かせれば良いのです。
新聞に書かせるためには、委員会設立の事実があればそれで足ります。
新聞に出てしまえば、多くの市民の皆さんは
「新聞に出るくらいなのだから、松村は何か悪いことをしたのだろう」
と思うことでしょう。市民がそう感じた時こそ、議員を縛り首にした瞬間です。

声の大きな一部の議員が騒ぎ立てれば、どうとでもなる。多数派が揃えば、気に入らない議員をどうにでもできる。
それは、議会制民主主義の死を意味します。


勝山市議会は、そこまで来てしまいました。