月下独酌Ⅴ

前勝山市議会議員 松村治門のブログです。 ご意見は、harukado.0501@gmail.com まで。お待ちしております。

中学校部活動についての私案 (1)目標とする部活動の姿と現状の課題 

本稿の目的

本稿は、中学生の部活動に関する私案である。

「生徒数が減ったから部活ができない」のではなく、「生徒数が減った今だからこそ、もう一度原点に戻って部活動のあり方を考えよう」との趣旨で作成した。「生徒が減ったから部活ができないので、学校を再編する」との意見への反論の意味も含まれている。

無論、これから述べる内容は私案に過ぎず、もっと優れた案が必ず存在するはずである。
皆様からの忌憚の無いご意見を頂戴したい。



目標とする部活動の姿

私は次のような部活動の姿を目指したい。

《中学生になると部活動が始まる。部活動に参加するかしないかは個々の生徒が自主的に判断する。生徒が参加したいのであれば参加する。部活動に興味がないのであれば参加しない。

ただし、参加するメリットはある。

ひとつは、生涯スポーツの観点からスポーツに親しむ経験を持つことができる点だ。したがって、複数の部活動を掛け持ちすることも可能である。

加えて、部活動に参加することで問題解決能力が高まる点もメリットとして見逃せない。
チームの課題をどのように解決するのか。これまでならば教員の指示に従うだけだったが、生徒たちはチーム内で話し合うようになった。自分たちのチームに何が足りないのか、具体的にどのような方法でそれを克服していくのか。皆が考え、語り合う。チームプレーを通して、集団での問題解決の手法を学ぶのだ。

それは生徒個々の練習にも表れている。その種目を行う上で自分に何が足りないのか、どのような能力を高めれば良いのか、生徒は個人個人が指導者と相談し考えて練習メニューを組む。したがって、嫌々練習をさせられてると感じる生徒はいない。定期的に行われる体力測定により、自分たちの能力の向上は目に見える形で数値化される。

自分に何が足りないのか、それを克服するためにどのようなメニューを組めば良いのか。部活動で訓練を積んだ生徒たちは、その手法を学業へ応用し始めた。
「先生、僕は数学の〇〇が苦手なんですけど、どういうことをやればいいですか」
「先生、私は歴史が好きじゃないんです。人物に興味を持てないんですけれど、具体的に何をしていいのかわかりません。相談に乗ってください」
といった問いかけが生徒から教師へ増えていった。受けた問いかけの重要性に気づいた教員たちは、内気で声がけできない生徒に対して積極的に問いかけるようになった。
「何か困っていることない?」
「前回の試験で〇〇ができてなかったけれど、具体的にどうすればいいのか、一緒に考えてみようよ」

「自学帳を1ページ埋めること」といった宿題は鳴りを潜めた。そして遂に宿題そのものが減るようになった。必要性がなくなったからだ。
生徒たちは部活動を通して、「自己で目標を定めてそれを達成する喜び」を知った。自分で学ぼうとする彼らに「全員で校庭5周」にも似た一斉宿題は意味がないのだ。
結果として、部活動の指導を離れた教員たちは、より深く子供たちに接するようになった》


……以上が、私が考える「目標とする部活動の姿」である。

部活動問題を考える際に、私たちはややもすると制度設計から話を始めてしまう。重要なことは、「今の部活動体制をどうするのか?」ではなく「部活動を通して子供たちに何を学んでほしいか」であるべきだ。その延長線上に「ならば、どのような制度設計をすべきか」との議論が来る。

私は部活動を通して、子供たちに
 ①スポーツに親しむ習慣
 ②問題解決の手法とそれを駆使する能力
を得て欲しい。それら能力は、特に部活動を通して得ることが期待されるものであり、部活動で得られた問題解決手法は学業に好影響を与えるのみならず、学校を卒業しても生きる力として不可欠なものだと考えるからだ。


このような部活動の姿を実現するためには、現在の課題を解決していく必要がある。
では、どのような課題が存在するのか。次にそれら課題を見ていきたい。

 

 


解決すべき課題

①部活動の位置づけ

(a)そもそも「本校中学生は全員部活参加」は、妥当なのか?
市内中学校では、「中学生になったら部活は全員参加すること」とされる傾向がある。しかし、学習指導要領上、部活動は生徒の自主的・自発的な参加により行われるものとされている。
 ⇒【課題】そもそも部活動に全員参加する根拠と意義はあるのか


(b)部活動は学校教育の中でどのように位置づけられているか?
部活動は学校教育の一環として行われてはいるものの、教育課程には含まれない。とはいえ、学校教育の一環として行われる以上、教育目的に沿ったものでなければならない。
部活動を通して、生徒に何を学び何を伸ばして欲しいのか。それを明確にすべきである。
 ⇒【課題】何のために学校で部活動をするのか。その意義づけ。

(参考)
「学習指導要領 総則
   第4指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」

(13)生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動については,スポーツや文化及び科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等に資するものであり,学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際,地域や学校の実態に応じ,地域の人々の協力,社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行うようにすること。




②教員が部活動を見ることについて

(a)部活動を担当することは教員多忙化につながるのか?
本県中学校教諭にとったアンケートにおいて、「忙しく感じることや負担に感じること」の1位が部活動・クラブ活動であった。
 (資料出典)
   福井県教員意識調査の結果http://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kyousei/02kaigi_d/fil/067.pdf

確かに、教員が部活動を担当することにより生徒の個性を把握しコミュニケーションを密にすることも可能である。ただし、本来的に教員は教育課程を充実させることを本分とする。教材研究など授業充実に割く時間を部活動に充てることは本末転倒であろう。



(b)専門外の部活を担当することの是非
教諭自身が経験のない種目を担当することは、教諭の負担を増やすのみならず、生徒にとっても十分な指導を受けられない恐れがある。
 ⇒【課題】外部指導員の導入の是非

 

 

 




③外部指導員を導入することについて

(a)外部指導員の法的地位
外部指導員を導入する場合、彼らの法的地位を確立しておく必要がある。民間人として勝山市から委託を受ける形にするのか。もしくは、嘱託職員として雇用するのか。
 ⇒【課題】外部指導員の法的地位


(b)外部指導員は有償かボランティアか
(a)の問題と密接に関係するのか、この問題である。果たして外部指導員は有償にするのか、ボランティアでするのか。
 ⇒【課題】外部指導員を有償とするか、ボランティアとするか



(b)外部指導員が行う指導の適正担保
外部指導員がどのような指導をするのか。この点には2つの視点が必要となる。
ひとつは、種目実技に精通しているか否かという点である。これは部活動の指導をする上で欠かすことのできない技能となる。
もうひとつは、教育活動の一環としての部活動の特性を理解した指導ができるか否かという点である。部活動が教育活動の重要な一環を担う以上、単に種目実技の技能を教えれば足りるというものではない。「部活動をとおして子供たちは何を学ぶのか」といった部活動の目的を理解した指導が求められる。
これら2つの視点は、外部指導員の採用時に求められるばかりではない。通常の部活動において確実に履行されているかといったチェックをどのように図るのか、それら技能を向上させるための講習会等がバックアップ体制が敷かれているかといった外部指導者への支援体制も必要となる。
加えて、仮に外部指導員の指導に行き過ぎがあった場合、どのような対応を図るのかといった問題にまで検討が及ばねばならない。
 ⇒【課題】外部指導員の指導内容・技能をどのように担保するか



(c)文科系部活動に外部指導員を入れることの是非
文科系部活動に外部指導員を入れることは、運動系部活動に外部指導員を入れることと分けて考える必要がある。
例えば、吹奏楽部の指導者に求められることは音楽教育の技能であり、それを最も備えているのは音楽教師であることを考えるならば、外部指導員を招聘する必要性自体が乏しい。


                  《続く》