月下独酌Ⅴ

前勝山市議会議員 松村治門のブログです。 ご意見は、harukado.0501@gmail.com まで。お待ちしております。

【勉強・受験】  基礎力・応用力のお話  ②ネットワーク化できる子供の発想

 

ネットワーク化できる子供の発想



では、「成績の良い」子供たちは、どのように共通項を掴んでいるのか。次にそれを見ていきましょう。

前述した数学の関数問題を例に取ります。

もう一度、関数問題を苦手とする受験生の内部を見てみましょう。

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これは、まさに知識レベルで混乱している状態です。

ならば、成績の良いとされる子たちはどのような発想をするのでしょうか。



中高6年間の「関数の旅」の第1歩は、中学1年生の「比例・反比例」から始まります。
具体的には、次のような問題です。簡単な問題ですので、皆さんも是非チャレンジしてみてください。

《問1》

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《問2》

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《問3》

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こういった問題をこなす過程で、勘の良い子は気がつきます。
「なんだ、結局は①グラフを書く ②式を求める ③座標を求める。この3つだけのことじゃないか」


そう、その通り。よく気がつきました……と、私は褒めます。なぜなら、関数の問題は、どこまで行っても
 ①グラフを書く
 ②式を求める
 ③座標を求める
この3つを延々とやり続けるだけのことだからです。


そこに気づいた子供の発想は、次のようなものになります。

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1次関数であろうが2次関数であろうが、変域を求める問題だろうが文章題だろうが、結局やることは一緒でしょ?……と、彼らは考えます。
したがって、新しい問題を見た時も鉛筆が止まることはありません。なぜなら、「結局、やることは一緒でしょ?」との発想に立つならば、方針がぶれることはないからです。

「結局、やることは一緒でしょ?」……これは、前述した主婦の料理を同じです。「小麦粉がないなら〇〇を使えばいいじゃない。だって、結局やることは一緒でしょ?」
道理を掴んだ人間はやることが見えています。見えているのだから、やるだけ。

逆に、数学の苦手な子は問題を前にしてウンウン唸っています。知識がバラバラになっているために、「どこから始めれば良いのか」との取っ掛かりが見えません。「ここはこうすればいいよね」との取っ掛かりを与えると、「あっ、そうか!」と鉛筆が進みます。そういった姿を見て、「なんだ、この子はできるじゃないか」と私たちは考えません。逆に「この子は、まだネットワーク化ができていない」と判断するのです。



これは数学だけの話ではありません。理科でも社会でも英語でも同様です。



「日本地理はバッチリです」という子がいるのならば、私たちはその子に問います。
「そうですか。それでは、京浜工業地帯とは?」
「続いて、北陸工業地域とは?」
これが知識レベルの質問です。教科書に出ている知識を問う質問です。

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知識レベルでの定着ができたならば、次のレベルの質問が始まります。

「では、京浜工業地域と北陸工業地域を比較して、北陸工業地域の特徴を説明してください」
これがレベル2の問題。

この問いは、様々な問いかけを子供たちに要求します。
「なぜ北陸地域に伝統工業が発達したのか」
「なぜ伝統工業は、地域ごとに異なるのか」
といった問いを考えることで、子供たちの中にある知識はネットワークを形成します。

北陸地方は雪が降る」
「雪が降れば、農業はできない」
「農業ができないから、冬は別なことをする」
「そうやって伝統工業が発達したのだ」
と共通項を結ぶ過程で子供たちは気づきます。

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逆に、「北陸工業地域と比較して、なぜ京浜工業地帯に出版・印刷業が発達したのか」との問いは、京浜工業地帯の性格を浮き彫りにします。






そして、こういった経験を積み重ねていく過程で、道理は更に進化していきます。
「道理と道理を結びつけて、更に深い道理を作り上げていく」との段階です。

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先ほどの地理の例を挙げるならば、
「北陸と関東の工業を結びつけて共通項を探る経験」のような思考経験を繰り返す子供たちは、途中であることに気づきます。
「そうか!農業や工業・商業は、その地域の地理的特性に影響されるのか」
更に深い道理のレベルでの気づきです。

「産業は、その地域の地理的特性に影響される」……このことは、当たり前のことです。そして、教科書にも何度も書かれ、先生たちは口が酸っぱくなるくらい繰り返します。

ですが、ネットワーク化を図らなかった子にとって、「産業は、その地域の地理的特性に影響される」との内容は、単に知識のひとつでしかありません。

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ネットワーク化を図る作業を続けていく過程で、子供たちは自分自身の理解として「ストンと肚に落ちる」経験をします。
「ああ、そうか。そういうことだったんだ」
「知識のフレームワーク」と呼ばれる、様々な知識を統括する道理をつかんだ瞬間です。

ここまで来れば、記述式・論述式だろうがどのような問題にも対応できることでしょう。






これは余談ですが、様々な形で「更に深いレベルでの道理」は存在します。

例えば、数学・理科ならば

小学校で学ぶ「シーソー」

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中学1年生で学習する食塩水の問題

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高校1年生で学習するチェバの定理

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これらは、すべて同じ道理で考えることができます。したがって、シーソーの理屈さえわかっていれば、すべて解ける仕組みです。






歴史ならば、例えばこれ。
「これは何ですか?」

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教科書の挿絵に出てくる有名な作品ですから、中学生は答えます。
ミケランジェロがつくったダビデ像です」

これは知識のレベルの話です。

ダビデ像が掲載されている教科書の同じページには、必ず「ルネサンス(文芸復興)」の用語も掲載されています。ですから、知識レベルとして「ダビデ像」と「ルネサンス(文芸復興)」は必ず押さえてあります。

そこで私たちは問います。
「なぜ、ダビデ像はスッポンポン(裸)なのか?」

これは、中学生にとっては実に難しい問いです。
使う知識は中学生の歴史の教科書に全て載っているはずですが、私の経験上、この問いに答えられる中学生は稀です。

これを読んでおられる皆さんも、是非考えてみてください。




さて、それでは次に「どうやって、知識のネットワーク化を図るのか」。その手法について考えてみましょう。