月下独酌Ⅴ

前勝山市議会議員 松村治門のブログです。 ご意見は、harukado.0501@gmail.com まで。お待ちしております。

【雑感】 横田めぐみさんたちを見殺しにしたのは誰だ

拉致被害者再調査北朝鮮が行う、その見返りとして日本の対北朝鮮独自制裁を緩和する。これに対して、おひざ元の自民党から懸念の声が出ているという。

 

自民党は30日、外交部会と北朝鮮による拉致問題対策本部の合同会議を党本部で開き、日本人拉致被害者らの再調査をめぐる日朝両政府の合意について政府側から報告を受けた。出席者からは北朝鮮側が確実に再調査を行うのか懸念する声が相次いだ。

会合では外務省の伊原純一アジア大洋州局長が「拉致問題は解決済み」としてきた北朝鮮の立場に「明らかに変更があった」と説明。「生存者が発見された場合には、帰国させる方向で必要な措置を講じる」と合意文書に明記した点を成果として強調した。これに対し、出席者からは「また騙される懸念がある」「調査を始めただけで制裁解除をしては『食い逃げ』されないか」など北朝鮮を警戒する声が続出

実行性を担保するため「(帰国していない)政府認定の拉致被害者12人については短期の期限を区切ってはどうか」「約束を守らなかった場合には合意の破棄や重い制裁を科す可能性もあると伝えて欲しい」との提案や要望も出た。伊原氏は「(再調査の)体制や期限については今後、協議で明確にしていく」と理解を求めた。

 (産経新聞5月31日)

 

調査をしただけで制裁緩和をしては、「食い逃げされる」だけではないのか?という疑問はもっともだ。だが、この疑問は根本から誤っている。その的外れさは、「再調査をすれば制裁を緩和する」との条件を次の条件に置き換えたときに明らかになるだろう。

拉致被害者を返してくれるのならば、制裁を緩和してもいい」

この要求がいかに馬鹿げているかは、北朝鮮サイドに立ってみればすぐにわかる。

 

私が北朝鮮首脳部にいたならば、必ずや次のように考えるだろう。

「そうか。拉致被害者を返せば制裁を緩和し、あわよくば食料供与もしてくれるのならば、新たに拉致被害者を作ればよい」

 

ここに山賊がいる。山を降りれば集落がある。山賊は山を降りては人をさらってくる。山賊の内通者も村の中にいるのだが、これを捕まえることもない。しかも、面白いことにこの村では「さらった人間を返してくれるのならば、お金や食料と交換しましょう」と言ってくる。

山賊がやることはなにか。まずは人をさらうことだろう。

 

おわかりだろうか。

先ほどの「拉致被害者を返してくれるのならば、制裁を緩和しても良い」という要求は、現在の我が国の現況では「日本国民をさらってください」と言っているに等しいのだ。

 

まずは、国内法で一刻も早く「スパイ防止法」を策定することだ。

 

冷静に考えてもらいたい。

日本国政府は12人の拉致被害者を公式に認めている。この事実は何を意味するのだろうか。

日本の公安は北朝鮮の内通者及びその痕跡を細かに把握しているということだ。でなければ、そもそも公式に認定することなどできない。公式に認定するということは、北朝鮮サイドが「それは日本のでっちあげだ」と反論してきたときに「そうではない。こういう証拠がある」と提示できる状態にあることを意味する。逆に、それをよく理解しているからこそ、北朝鮮サイドは政府認定に対して反論をしない。

 

日本の公安は掴んでいるのだ。

実際に私の知人の公安関係者は言外にその事実を認めている。彼の名誉を傷つけたくないので詳細を述べることはしないが、公安はかなりのところまで詳細を掴んでいる。

しかし、事実を掴んでも公安は動けない。

なぜなら、動くための根拠法令がないからだ。

公安は歯がゆいだろう。地道に足を使って情報を集め、ヒューミタントによる諜報活動で裏をとり、ほぼ確定的とまで言える事実を固めても、目の前にいる北朝鮮内通者を確保することもできない。

 

「何を言っているのか。刑法には外患誘致罪があるではないか。それで裁けば良いだけのことだ」

と主張する者もいる。それこそ、何も知らないバカ者の戯言だ。

外患誘致罪は、その性質上、外交問題と直結するために司法は極めて消極的な態度を示してきた。この罪状で審判された例もなければ、訴追された例もない。唯一、その可能性があったのは、あのゾルゲ事件であるが、あれほど耳目を集めた事例ですら公判維持の困難さから訴追を見送られている。

 

つまり、現行法制下で横田めぐみさんを拉致した人物、そしてその手助けをした日本人たちを裁く方法はない。

 

自民党の先生たち。

「食い逃げされるのではないか」などという心配をする前に、まずはスパイ防止法を作りましょう。

 

こういった話をすると、必ず「人権侵害の恐れがある」と反論してくる人がいる。

私は人権を擁護する。しかしながら「人権は天賦のものであり、生まれながらにして有する権利だ」というテーゼを絶対視していない。

なぜなら、そういった考え方は所詮はコミュニティ内でしか通用しない、いわばルールに過ぎないからだ。「人権なんぞに何の価値があるのだ」とコミュニティに入ってくる「ならず者」に、人権はなんの反撃もできない。

 

 

スパイ防止法は人権侵害につながる」と言う人々がいる。

ならば、横田めぐみさんたちの人権はどうなるのだ。公式認定された12人以外の拉致被害者の人権はどうなのだ。もっと早くスパイ防止法を定めて、北朝鮮からの入国者やその手引きをした日本人たちの活動を抑えておけば、拉致被害者たちの人権は守られたのではないのか。

 

ジャーナリストとして信頼に値すると常々敬服している青山繁晴氏が参考人として陳述している内容をご覧いただきたい。

時間のない方は6分10秒あたりからご覧になられることをお勧めする。

 

 


【青山繁晴】言魂「拉致被害者は日本国民だ!」衆議院 国家安全特別委員会 参考人招致 ...

 

 

 

無法者とは、法の枠外に住む者のことである。

その無法者に対するには武装するより他にない。

武装とは、この場合「法による武装」である。